何清漣:民衆の生存権はエネルギー源戦略の犠牲にされなければならない?


 『大紀元』(http://www.epochtimes.com/gb/ncnews.htm)より


 (何清漣:民衆生存権需為能源戦略而犠牲?)


 【大紀元11月20日訊】漢源暴動事件は中国政府が「飴と鞭」の方法で慰撫した後、今のところ収まっているが、この事件が暫時収まったということは問題の解決を意味しない。なぜなら政府の慰撫は良くて沸いたお湯を戻して沸騰をとめただけに過ぎず、抜本的な対策では絶対にない。鍋の中の水の沸騰を引き起こす「薪」がまだあるからであり、火が一旦燃え盛れば、水は再度沸くだろうから。この「薪」とは中国の水力発電を主としたエネルギー源戦略のことである。


 中国のエネルギー源戦略の需要のため、中国政府はダムと水力発電所の建設プロジェクトを決して停止することはできない。漢源事件発生後の11月9日、中国水利部の部長汪恕誠はある科学技術の報告会で講演を行い、中国の水エネルギー資源の理論的埋蔵量は6.89億千ワット、その中で経済的に開発可能な量は3.95億千ワットである。都市の供水を保障し、洪水を防ぐ能力を高めて水力発電を発展させ、エネルギー源の緊張を緩和するため、中国はまださらに多くのダムを建設せねばならない――この話は国際社会を驚かせた。なぜなら目下世界の発展した国家がダムを破壊することに力を注ぎ、生態を回復させ、多くの国際環境保護団体が中国の大量のダムに各種の警告を発していろいろな阻止運動を行っている時なのに、汪恕誠は本当に国際環境保護の潮流に反して動くつもりなのか?


 実のところ、汪恕誠のこの話は決してでまかせではない。この話の背景には、中国がエネルギー源の危機に直面し徹底的な方法を取るように迫られていることがあり、そのため水力発電を発展させることは事実上すでに中国の主要なエネルギー源戦略となっている。政府の戦略構想によれば、中国の開発可能な水容量が3.95億千ワット、そのうち現在水力発電に使用されているのは1億千ワット、このためすでに1600万の民衆が移住させられ(そのうち少なくとも1000万人は移住のため貧困に陥った)、もしさらに2.95億千ワットの利用可能容量を開発するならば、それが意味するのはこのあとさらに現在の三倍の移住者を生み出すということであり、またさらに多くの社会騒乱を作り出すということである。


 90年代中期以前は、中国は主要には本国の資源に依存して経済発展を支えていた。経済の伸長に伴い、外部の資源への依存が年々強まっている。中国政府のブレーンたちもまたこの種の資源依存型発展が長くてあと6年前後の「戦略機会期」であることを知っている。おととしからエネルギー源の欠乏に遭遇して以来、各地の電力は不足し、少なくない経済発達地域の電力供給が供給を制限するほかなく、生産工場は三日開けては四日休む状態に追い込まれた(電力供給三日、停電四日)。このときより、中国は多くの代替エネルギー源を探し始めた。中国政府の新しいエネルギー源戦略によれば、中国の今世紀初頭20年の主要エネルギー源開発戦略は、極力エネルギー源の「構造多元」化にすることである。それは大体のところ水力発電原子力発電、太陽発電、バイオ発電、風力発電等を開発し、化石燃料への依存を減らし、エネルギー源の持続可能な発展を勝ち取ることである。ただしこれらのエネルギー源のうち、原子力発電は直面している三つの難題、資金投入・技術・環境のため、その目標を「2020年まで原子力発電による発電量は4000万千ワット、総発電量に占める割合を4%にまで引き上げる」としか定められず、その他の太陽発電、風力発電、バイオ発電もまた気候条件の制限や技術の制限により、いくつかのプロジェクトを立ち上げられるだけで、主要な代替エネルギー源の発展方向は水力発電にならざるを得ない。中国は水力発電大国であり、現在の開発率は15%に過ぎず、開発率の低さは世界のレベルに程遠く、インド・ブラジル・ヴェトナム等の発展途上国にも劣り、開発の潜在力は巨大である。


 このように水力発電の開発は国家戦略となったが、では全国すべてのダム建設地域に選ばれた地域の住民はただ引越しさせられるだけであり、中国共産党のあの「個人の利益は国家の利益に服従しなければならない」という論理によれば、底辺民衆の生存権など巨大な国家利益に比べれば小さくて取るに足らないものである。国家のエネルギー源戦略のため、ユネスコが認定した「三峡渓谷」の世界遺産である長江上流虎跳峡もダム建設予定区域となっている。虎跳峡は最も深いところが3000メートルにも達し、世界で最も深い峡谷と認められており、風光明媚、文化遺産が豊富で、中国で最も喜ばれる旅行地のひとつである。この地域ですらダム建設の厄運を免れないのであれば、漢源などの地域は言うまでもないことである。


 現在、独裁の中国政府はただ経済発展を自己の合法性の証明とするほかなく、過去20数年、中国はまったく賢くないやり方で高エネルギー、高消耗の経済高速発展の道を進み、農村や大部分の中小都市を犠牲にして上海北京広州深センなどの近代化のショーウインドーを作り出してきた。だが、この種の世界の少なくない資源を使い尽くす方法では、本国人民の高失業率問題を解決できないばかりか、それが作り出した汚染は子孫に災いを残し、また近隣諸国にまで災いをもたらした。日本、韓国は中国の黄沙の被害者となり、香港の空気も大陸の排ガスの影響を受け、中国と水源をともにする隣国である、タイ、ラオスカンボジアベトナムも相次いで中国水資源問題の被害者となり、隣国から恨まれ続けている。


 中国は現在危機併発期に突入した、と言ってもいいかもしれない。いわゆる「経済改革」が総数の富者をつくり出すとともに、さらに速い速度で富者の数十倍の貧者を作り出し、かつ中国の経済高度発展を支えるのは略奪的使用に晒される中国の生態環境である、と。深刻に破壊された環境と大量の貧民は国際資本の視野には入らないひとつの中国を構成する。最近頻発に発生している大規模な大衆暴動は、いくつかの近代化ショーウインドーの繁栄が覆い隠しているところの真実の中国を再び示した。これは権勢者の私有化の過程で搾取され投げ捨てられたひとつの中国である。そしてこの中国が大多数の中国人がそこで生活しているところの真実の中国である。この中国はすでに火が地を駆け巡り、のろしが四方に立ち、いつかは中華文明を灰燼と帰すだろう。(華夏電子報)


http://www.epochtimes.com/gb/4/11/20/n723318.htm